「戸建て」か「マンション」か
住宅を買うときに悩む点はいくつかありますが、その中でも大きなものが戸建てにするかマンションにするかです。ライフスタイルによって、どちらにするかを決めるべきなどと、一般的には言われますが、設計事務所としてこの問題を考えてみます。
まず言えるのは、住宅の購入はほぼほぼ人生において最大の支出なので、個人の好みで決めるべきではないということです。今も昔も「ライフスタイル」という言葉は、ポジティブに使われますが、そもそもが収入と職業でライフスタイルの大部分は決まってしまうわけですから、それをふまえて住宅の購入を考えるべきです。そして現代社会においては、将来の見通しをたてることが最も難しいのですから、住宅の購入では厳しくコストパフォーマンスをみるべきと言えるでしょう。その場合、重要なのは、最初にいくらで買うかよりも、今後10年・20年でいくらかかるのかの方です(ストックとフローの話ですね)。これについて、マンションであれば毎月の管理費・積立金が示されているのでわかりやすいです。
一方、戸建てでは毎月の管理費・積立金はありません。ですが、経年劣化にともなう修繕はマンション・戸建てとも必要になるので、戸建てでは、管理費・積立金相応の金額を自分で用意しておく必要があるわけです。要はマンションでは管理組合がやっていることを自分だけでやらなければならないということです、、、とても大変ですね。大変なので、皆さん深く考えないわけで、いざ修繕となると、大騒ぎとなるわけです。
というような相談をお客様から受ける身なので、私はマンション派なわけです。ただ、建築業界は戸建て派が実に多いので、こういう主張をするのはなかなか勇気がいることだったりします。
結局のところ、選ぶ基準となるのは、自分たちで建物管理にどれだけ手を掛ける気があるのかになると思います。
管理組合という制度もあまり評判はよくありませんが、そもそも建物管理は大変な作業なので、負担を分散させているだけまだマシといえると思います。昨今の社会の中で手間と時間をかけてでも、自分自身でよい管理計画をたてたいと考える人は少ないと思うので、マンションの方が現実的なのでしょう。逆に言えば、建物管理を自分でできるのであれば、戸建ての方が、自由度も高く、コスト管理も柔軟に行えるわけです。このあたりは賃貸アパートを計画する際も同様ですね。
こういった考え方・管理負担の整理区分なども、昨今では設計計画の重要な要素となっているわけです。